電話なんて、かけなきゃよかった。


 
 耐えられないほどの
 心の痛みに襲われて

 私は耳から、スマホを外そうとした時。



『何?』


 マトイの不愛想な声が脳に届いた。




 一言でもしゃべったら、
 声に涙が混ざりそう。



『蓮見、要件を言えって』



 言ってもいいの?

 今すぐ、会いに来て欲しいって。




 その時。


『マトイ君~、誰と話してるの~?』



 お花のような柔らかい声が
 スマホから聞こえてきた。



 お酒が入って、色気が増したような声。


 雪城さんだ……




 なんだろう。

 この悔しさは。



 アミュレットのマネージャーの座を
 雪城さんに取られたから?



 それとも……



 私との約束を無視して
 マトイが雪城さんと一緒にいるのが
 嫌だから?



 多分……

 その両方だ……



 ダメだ。

 涙が止まんない。