「次は、綾星」
「あ、はい」
「メンバーの中で一番羽化したのは、
間違いなく綾星ね」
「羽化って、俺、セミですか?」
真面目な顔で聞いてきた綾星に、
笑い声をあげちゃった。
セミって、地味過ぎ。
私としては、優雅に青空を舞う、
アゲハチョウを想像したんだけどな。
「まさか綾星が、
ドロ甘で痛い系に脱皮するとはね」
「俺のこと、けなしてます?」
「逆だよ。褒めてるの」
一生恋なんてしないって
言い張っていた綾星が。
恋のお守りソングを歌うのに
ふさわしい男になってくれたなって、
喜んでいるの。
「綾星には、謝らなきゃ」
「何をですか?」
「私、綾星と苺をくっつけようと
しちゃったでしょ?」
「苺とステージで歌わされたのって
そういう意図だったんですか?」
「ごめんね」
綾星にも、恋をしてもらいたくて。
本性を隠している者同士
お似合いかなって勘違いしちゃったの。



