少し歩くと見覚えのある、 長い茶色の髪をした女性が笑顔で手を引いてくれた。 日に焼けた彼女の手は暖かく、 僕の手のひらとの間には少しの汗をかいていた。 しばらくすると、 僕の手をひく彼女が振り返って指をさした。 その方向を見ると、 小さな家の前に、人影が見えた。 その家の塀に沿って並べられた植物の花は、 どれも赤く、それをみた僕はやっと思い出した。 飛行機を乗り継ぎ、約30時間をかけて僕は、 ブエノスアイレスに来ていた。