奈津美が6本のロウソクをランダムに並べた。 僕がラ・エスタンシアのライターで それに火をつけると、 「おめでとう」と奈津美が言って、 両手を合わせて指先だけで小さく手拍子をした。 僕がロウソクを吹き消そうと息を吸い込み、 大きく吐き出す一瞬前に、 唇を尖らせた奈津美が一気にそれを消した。 「なんでだよー」と思わず僕が言うと奈津美は、 満点の答案を母親に差し出す子供のように言った。 「私も、今日21歳になりました」 僕は狐に抓まれたように目を見開いて、 まばたきすることを忘れた。