僕は長すぎる夏休みを、
週に3度のアルバイトと、週に1度のデート、
2週に1度くらいのペースで相沢と奈津美と過ごした。

毎朝起きると、トイレに行き、顔を洗い、
歯を磨きながらお湯を沸かして
インスタントのコーヒーを入れ、
ソファーに座り、文庫本を1時間読む。

この夏はそれに加えて、
窓際に置いたあのサボテンに、
少しの水をやることも僕のルーティンとなっていた。

サキはあまり束縛をしないようになり、
僕と会わない日は料理教室とジムに通っていた。

『自分のためですから』
と言って照れくさそうにキッチンに立つ姿を
僕はとてもかわいらしく思ったけれど、
そんな背中を後ろから抱きしめる勇気はなかった。