「早くも夏バテらしい、食欲がなくて」

そう言って僕は個室に入った。

「まだ、梅雨バテだろ、
 てか、食ってないのに出るのかよ」

僕はトイレではいつも個室に入る。
そして、河野の言いつけを守り、便座に座る。

相沢は手を洗いながら続けた。

「恋の病か、機能不全の悪化か、それとも便秘か」

僕は黙って用を足した。

「サキと、会ってないみたいだな」

個室のドアを開けると相沢は鏡に向かい
前髪を指でつまんでいくつかの毛束を作り、
そのバランスを整えていた。