紅一点

 

「ハオ。私を、この世界に
売ったのは、奴等よ。」

太夫が、男たちの後ろ姿を
見つめたまま呟いた。

…待って…

おかしくない?

私と太夫は、
太夫の見かけに反して
母子ほどの年の差がある。
なのに…同じ男に売られるの?

「太夫…私、あいつ等から
逃げてここに来たんだけど…
向こうで風俗斡旋したのは
あいつ等だった。」

戸惑いながら、なんとか
そう言葉にすれば、太夫が
驚いた様にこちらをみた。

「…あいつ等はブローカーよ。
向こうの世界から、
オンナを売りに来ている。
その逆も、下手をすれば
薬物なんかも…あるかもね。
今の所聞いたことはないけど。

私が言うのもなんだけど、
ヤツらも、この数十年、
容姿が変わっていない。」

太夫の表情が曇る。

あの半グレは、太夫と同じか
下手すれば、更にジジィの
可能性だってあるのだ。

…ってことは
あいつ等もこの世界とつながる
術を、持っているという事?

「奴等は多分、大きな組織には
属していない。

この世界で、何十年も
変わらぬ商いで往来している割に
人身売買としては、まるで
小遣い稼ぎ程度の規模である事を
考えれば、大きな組織ではない。」

太夫の見通しが正しいのだろう。
組織ぐるみで、この世界に
関わっているのだとすれば、
多分、ここは、今頃とっくに
奴等のシマ状態になっているはず
なのだ。