ハオと私たちのやりとりを
黙って見ていた雅也が
徐に口を開く。
「おい。コイツ何モンだ?
それとも、向こうじゃ皆、
この程度の知識を持ってるって
言うことか?」
ハオがスタンダードなのか
普通より秀でた子なのか
はかりかねるけど…
「コレは…教本か?
こっちよりは、女子の教育も
進んでいるって事か?」
以前から、気になっていた。
この街、この世界は、異常に
何かに偏ってるんじゃないかと。
俺は他の世界は知らないが…
…単なる仮定だが
向こうでドロップアウトした
人間が、この世界を
構築したとすれば。
それが俺ならば、
自分の好きな物で
埋め尽くすだろう。
「淳之介、やっぱりハオは
ウチで引き取るわ。」
ヒトが考え事をしていれば
ソレを断つ様に、池田屋が、
ウンウン頷きながら
勝手な事を言いだした。
度胸も頭の出来も、
容姿も自立心も申し分ないから
そんなこと言うんだろうが。
ハオはモノじゃない。
成り行きとは言え、
俺が引き取ったんだ。
絶対、ホイホイ渡さない。
「ダメよ。池田屋。
ハオはモノじゃないわ。
アタシが引き取ったのだから
返さない。」
「誰も取り上げるなんて
ゆってないでしょ、淳之介ったら。
ハオに、ウチで働いて欲しいって
言ってるの。」
池田屋曰く、ハオの知識は、
彼女の店の女郎が
独り立ちする時に、
役立つらしい。それに、
キャバドレスってのも
この辺じゃ珍しく斬新だ。
型紙をおこせば、量産も
できるという。
そうすれば仕立てで
生計を立てる子も
出てくるというのだ。
池田屋は、女郎の買取価格は
他の店と比べて安いが、
こういう、勤め明けの
生涯設計の提案力の観点から
オンナ達から人気がある。


