幼馴染の聖女が勇者パーティー追放されたから、俺も一緒について行く事にした。


「結局児童施設は閉鎖なのね……」
「師匠のところに預けてきて正解だったな……」

 あのあと、保護した子どもを伴ってファイシド様の屋敷に事の顛末を話に行った。
 主人不在なので、戻ってきてから児童施設の件は話し合われる事になるが、現状児童施設にいたのはあの子一人……他の子たちは、いつの間にか『引き取られた』事になっていたらしい。
 当然、それは嘘だろう。
 あの子が『最後』だったのだ。
 間に合わなかったと嘆くべきか、タニアを預けなくて正解だったと安堵すべきか。
 少なくともあの子だけでも助けられて良かった。
 透明化の必要性も含め、児童施設は一時閉鎖される事になり、あの子はファイシド様のお屋敷で引き取られて使用人見習いとして働かせるとの事だ。

「とにかく切り替えていきましょう! 魔法石も残り四つ!」
「そうだな」

 残っているのは東の『ウェルシーのゴッドドライン』。
 南東の『スタンディーのラオンヘッド』。
 南東の孤島『ルクシエスのタージェ』……俺たちの故郷だ。
 そして『魔王の城』へ続く最難関ダンジョン、西南の孤島『グレインズ』。
『魔王の城』は別時空の扱いなので、魔法石を埋める必要はない。
 順当に行けば次は『ウェルシーのゴッドドライン』。

「……それにしても、ここに来てようやくセレーナとまた二人きりになったな」

 ふっ、と笑みが自然に溢れた。
 元々前の勇者、ユイ殿の振る舞いに嫌気がさして、そこに来てのセレーナのパーティー追放。
 そっと手を差し伸ばすと、セレーナも意図に気づいて手を重ねてくれた。
 セレーナとの二人旅の再開……俺がなによりも望んでいた事だ。
 いや、タニアの事は大切に思っているぞ。
 いなくなって寂しいとも思う。
 むしろどこに預けてきたのかを思い出すとまた不安と心配に支配されてくる。
 タニアは大丈夫だろうか、また不安になってきた。
 やばい、とても心配だ。
 預けた相手が相手だけに……本当に大丈夫だろうか!
 あの人本当冗談じゃないくらい容赦しないからな!?
 くっそう、隣にセレーナがいるのに!
 やっと二人きりなのに!

「……ねえ、ライズ……タニアは大丈夫かしら……」
「セレーナも気になっていたのか」

 だよな。

「セレーナ、提案なのだが依頼とか受けずにサクッと用事を済ませて『賢者の森』に行くのはどうだろうか?」
「すごく賛成」

 頷き合う。
 本当ならのんびり観光も兼ねて町を散策したり、したかった。
 だが、俺もセレーナも心は一つ。
 さすがセレーナだ、俺が選んだ君はやはり優しい。
 そんなところも大好きだ!

「旅行なら結婚したあとでも来れるもんな!」
「そうよ! 師匠の無茶振りでタニアが苦しんでる方が問題よ!」

『ウェルシーのゴッドドライン』、『スタンディーのラオンヘッド』、そして故郷、南東の孤島『ルクシエスのタージェ』の入り口にサクッと魔法石を埋めて結界を張り、俺とセレーナは『賢者の森』へと急いだ。
 この間、三日。
 タニア、無事でいて欲しい。
 痛くてつらくて泣いたりしていないだろうか?
 ご飯はちゃんと食べさせてもらっているだろうか?
 あの人マジで修行に夢中になると俺たちに食事与えるの忘れるからな!
「一日くらい食わんでもしなんじゃろ?」とか言って三日間ほぼ休みなしとかやらかすから!
 あの人の時間感覚ズレてるんだよ!
 そこんとこ自覚してないからほんっとに死にかける!
 タニアまで同じ目に遭っていたらと思うと……思うと!

「タニア! 無事か!?」
「師匠! タニアに無理強いしてませんよね!?」

 イヅル様、まだお帰りになっていないんだな!
 と、頭の片隅で思いながらイヅル様の家に駆け込む。
 するとそこには……野菜を山盛り食べさせられているタニアの姿!

「「…………」」

 良かった、ちゃんと食べてる。
 ではなく。

「お前ら早かったなぁ」
「し、師匠、タニアがなぜか死んだような目で野菜をもしゃもしゃしているのですが、なにかあったのですか?」
「いや、ただ単にこの娘のステータスを確認したら『太り過ぎ』と書いてあってな」
「「え?」」
「うーー……」

 タニアは野菜より甘いお菓子や魚や肉の方が好きなのだが……。
 いや、好き嫌いはよくないし、翼竜と暮らしていたのだから魚や肉をよく食べるのは当然だろう。
 それに、毎度「どこにそんなにはいるんだ?」というくらいたべていたけど、成長期のタニアにはきっと体が欲する量だったに違いない。
 人間の食事はメニューも豊富でいろんな種類をたくさん食べたくなるのは仕方ないはず。

「太り過ぎ……? タニアが、ですか?」
「ライズは鑑定魔法を使えただろう? 使ってみ?」
「…………」

 正直半信半疑だが、タニアのステータスを確認してみる。
『状態』の欄に……『肥満』と出た。

「ばかな!」
「いや、見るまでもなくもっちもっちじゃよ? 儂最初見た時、『人間の子どもは丸いと聞くがこんなに丸かったかのう?』ってちょっと思ってた。お前らまさかと思うが、自分たちが食べる量と同じ分だけ与えとらん? お前ら成人、この子成長期とはいえ幼児。あとお前ら魔物と戦ったりするじゃん? この子非戦闘で幼児。……分かるか? この差」
「「…………」」

 ぐうの音も出ないほど理解した。