幼馴染の聖女が勇者パーティー追放されたから、俺も一緒について行く事にした。


 そんなわけで北東にある『ファイシドのアルゴッド』にやってきた。
 タニアの事は心配だが、『タージェ』に行く途中に寄って様子を見よう、という事になったので我慢だ。
 だって、あまりすぐに行っては、こう……。

「過保護か」

 と、師匠に言われそうで。
 いや、実際レトムに言われたのだが。
 いつの間にかタニアが俺とセレーナの中で大事な妹的存在になっていたのだな……。

「さて、と……入り口に魔法石も埋めて、他にやる事といえばこの町の児童養護施設の調査なのよね。別に勇者に任せても、サブクエストだかサブイベントだかで解決出来たはずだけど……」
「子どもの命が関わっていると思うと捨て置けないな」
「ええ、放置すればした分、子どもが犠牲になっているかもしれない。私たちで調べましょう」

 当初の予定通り、養護施設に行ってみる。
『ファイシドのアルゴッド』は、北東という事もあり比較的寒さが残っている町だ。
 厚着の子どもたちが駆け回る庭は、一見平和そうだが……。

「どうやって調べる?」
「待ってね、今ゲームの内容を思い出すわ。……確か、施設の側にある教会にヒントがあったはずなんだけど……教会の中の……うーんと……」

 考え込むセレーナ。
 今日は記憶を探るのに時間がかかっているな。

「……思い出した! 地下だわ」
「地下?」
「そう、この町の地下にファイシドの屋敷と通じる秘密の通路があるの。ファイシドはその道を使って時々お忍びで仕事を抜け出していた。けれど、ある夜に教会の天井裏が魔王の城と繋がる空間の扉が開いている事に気がついてしまうの」
「……! ……ファイシド様は執務の実績で町長になられた方だったな。それに、魔王の城の推奨レベルは60〜70。……並の冒険者や、この町の騎士団でも厳しい」
「ええ。それに、勇者は一つもダンジョンを制覇していないから……」
「! そうか……ダンジョンを制覇されていない状態の魔王の城の推奨レベルは100の状態か!」

 勇者が各地にばら撒かれたダンジョンを攻略する事により、ダンジョンは成長をやめる。
 その成果が、『魔王の城の弱体化』に繋がるのだ。
 だが、ユイ殿は一つのダンジョンも制覇していない。
 なので、『魔王の城』の推奨レベルはこの世界の限界値……100のままなのだ。
 召喚されてきたばかりのアイカ殿に限らず、各町の騎士団や冒険者の平均レベルでは到底なんとかなるものではない。

「ファイシド様は今 泉議会室(ドル・アトル)で会議に出ているから、留守……。そのサブイベント? とやらは、ファイシド様がいなくても問題ないのか?」
「ええ、解決したあとでも話を聞いて仲間に出来るわ」
「別にファイシド様に仲間になってもらう必要はないが……」
「そうね! ファイシド様が仲間になりたそうにこちらを見ていてもシカトしましょう!」

 というわけで、セレーナと二人でまずは教会に行ってみる。
『神殿』や『小神殿』よりもさらにこじんまりとした、信仰を捧げる場所……それが『教会』だ。
 中に入ると、やはり誰もいない。
 教会は基本的に無人。
 本当にただ、祈りを捧げるためだけの場所。
 そう考えれば隠し通路で出入り口にするのに、こんなに適しているところもなかなかないかもしれない。

「えっと、どこから屋根裏に行けばいいのかしら?」
「階段が見当たらないな? ……もしかして、外から回り込むのか?」
「外階段! なるほど、そうだったかもしれないわね。外から一周してみましょう」

 ファイシド様が使っている地下の隠し通路とやらも、正直どこなのか気になるところだが……知ったところで使うわけでもない。
 ただ男としてはとても気になる。
 だが今は屋根裏に登る階段だ。
 セレーナは右、俺は左から建物を一周する事にした。
 すると、ちょうど建物の裏手に来た時、人の声がして思わず隣の倉庫裏に隠れる。
 俺の後ろから歩いてきたのは、小さな子どもと黒いシスター服の老婆……。

「!」

 いや、あれは……老婆に化けた魔物だな。
 モノマネスライムだ。
 力は弱いが物理攻撃は無効化する。
 さらに食った生き物の真似をする事から、『鑑定魔法』を持たなければ見分けるのが厄介。
 優しげな表情でタニアくらいの女の子の手を引いて、教会の裏手へと進んでいく。
 俺が隠れていた倉庫を通り過ぎて、なにか話しながらどこかへといなくなる。
 あとを追って見れば、教会の裏に外階段があった。

「ライズ、見つけたわね」
「ああ。今、幼い子どもが老婆に化けたモノマネスライムに連れて行かれた」
「!」
「行こう」
「ええ!」

 階段を駆け上がり、扉を蹴破る。
 そこにいたのは老婆からスライムに姿を変え、子どもを門の中へ引き摺り込もうとしている場面。
 剣を引き抜き、魔力を込める。

「紅蓮斬!」
『ギャァァン!?』

 斬った瞬間に、切り口が燃え上がる。
 子どもを保護して、屋根裏にある扉の奥を覗いてみた。
 やはり、魔王の城だ。
 そしてここはおそらく談話室だな。

「どうしよう、ライズ……」
「また魔王の城でレベルを上げたくなった時に使うのも便利そうだが……」

 剣を持ち直す。
 斜めに刃を傾けて、魔力を通し、ゆっくり肩の位置へと持ち上げる。

「破壊しておこう」

 空間系の魔法を使っているのなら、同じ空間系の魔法を使える俺にしか壊せない。
 空間魔法は聖魔法同様、使い手を選ぶ。
 非常に扱いが難しく、セレーナは使えなかった。

「真空断絶斬!」