幼馴染の聖女が勇者パーティー追放されたから、俺も一緒について行く事にした。


「そのうち人間にも感じられる者が現れるだろう。魔物……たとえば魔王のような、配下の知性が高い者ならばすでに感知している者もいるかもなぁ」
「もしかしたら人間に接触して『予言』を与え、混乱をもたらそうと考える者も出るかもしれません。『神殿』に行ったら、その辺りの事も伝えてきた方がいいかもしれませんね」
「あー、そうかそういうのもいそうじゃなぁ〜。魔王はこんな姿になっているが、配下たちは放置してきたからなぁ」
「! ……あ、あの、それに関しまして……実はアマード氏が多嵐(デッド・タイフーン)の事を知っていたのです。誰かに聞いたようでしたので、もしかして魔王の配下の者が、と思ったりもしたのですが……」
「なに? もう知っていた者が? ふむ……」

 師匠がしれっと「魔王の配下全部食べてこようかなぁ」とほのぼの微笑んでいるので、ステルスが黒い顔を青ざめてガタガタ震えている。
 鳥の姿でなくともあの笑顔は鳥肌が立つな、分かるよ……。

「気になりますね。新たに召喚された勇者や、『神殿』に『神託』が降りてない件と一緒に調べてきます」
「そうさなぁ。まあ、その辺りはこの世界の住人であるお主らが好きにするとよいよ。勇者の件は儂の事情だから、調べてくれるんならなんか礼はするわい。して欲しい事とかあったらなんでも言っておくれ」
「いえ、そんな。我らに味方していただければそれ以上は望みません。敵にさえならないでくださるなら!」

 イヅル様がガチ頼みだ。
 気持ちはとても分かるしなんならめちゃくちゃ同意見だが。
 というか、それが一番かもしれない。
 いや、マジで。真面目に。
 師匠だけは敵に回したくない。本気で。

「……う!」
「ん?」
「たにあ、つよくなりたい。ていまー、なりたい。つよくして!」
「タ、タニア!?」

 突然椅子の上に立ち上がると、タニアが師匠にそう主張を始めた。
 正気か!?
 そりゃ、もう少し大きくなったらタニアを師匠に預けるのもいいかもしれない、とは思ったけれど……いくらなんでも早すぎる!

「んん? 儂に修行をつけて欲しいのか童」
「ん!」
「タニア、よすんだ! お前にはまだ早い。師匠の修行は厳しいとかそういうレベルではない! 死ぬぞ!」
「いや、さすがの儂もお主たちに課したような修行をこんな幼児(おさなご)に課したりせんよ。そこまで鬼畜じゃないと思う」
「えぇっ!?」

 申し訳ないが一切信用出来ないー!
 俺とセレーナが師匠に会ったのは八歳ごろですよー!?
 タニアはあの頃の俺たちより幼いですが、そんな幼い頃の俺たちにもあんな厳しい修行を課していた人のそんなセリフ……信用出来ない! 一ミリも! まったく! これっぽっちも!
 師匠の事は信頼しているけれど、修行に関しては!
 本当に! まったく! 全然! びっくりするほど! 信用出来ない!

「…………。ライズ、全部顔に出ておるよ? なに? はっ倒されたい感じか? よいぞ、耐えてみよ」
「す、すみません! でも! 修行に関しては本当に何度も死ぬかと思ったので!」
「まあ、何度か本当に死んだから蘇生はしたけどな」
「ほらあああああぁぁ!!」
「仕方ないじゃん、儂、手加減苦手なんじゃもん。教えるのあんまり得意な方ではないし、普段教えておるのは一族の弟たちなんじゃもん。あいつらを鍛えておる時のノリでやっちゃうの、仕方なくない?」

 弟たち……それは師匠と同じ種族という事ですよね?
 そんなのと……師匠の生き物レベルからして違う修行レベルに合わせられたらそりゃ死にますからね?

「八雲さんは本当に人間鍛えるの向いてないですよ。タニア? この人を師に選ぶのはやめておきなさい。死にますよ」
「そうだぞ、タニア。師匠は強いが、向き不向きというものがある」
「ヤダ……儂の教育方法二人に真顔で否定されちゃった……」
『意外でもなんでもないな……。王獣種が人間鍛えてついてこれる奴とかいんの?』
「いるぞー。たまにな。儂以外には人間教えるの上手い兄弟もおるから。儂の弟なんて、教え方上手すぎてうっかり神格化とかさせちゃっとるし。そういえば儂の四つ上の兄とか勇者育てたぞい」
『「「…………」」』
「ねえ、その顔なんなん? 儂変な事言ってなくない? すんごい解せんのだけどお前らのその表情」

 他の兄弟はともかく、という事です。

「……がんばる。つよくなりたい。たにあ。らいずたちみたいに、つよくなりたい」
「タニア……」
「つよくして」
「強くなれるかはお前次第じゃよ」
「がんばる」
「タニア、本気か? 本当に……」

 こくり。
 タニアが頷く。
 とても澄んだ瞳。
 これは——言う事を聞かせるのは無理だな、

「師匠……」
「まあ、死なさんよう気をつけるよ」
「本当ですね? 言質取りましたからね?」
「おおう、圧がすごい」
「当たり前でしょう!」