幼馴染の聖女が勇者パーティー追放されたから、俺も一緒について行く事にした。


『アマードのストラスト』……大陸の西にある町。
 あれほど緑と水に溢れた『ドラドニエン』の隣にあるというのに、『ストラスト』は砂塵の町と呼ばれている。
 緑は枯れ果て、オアシスを中心に展開しているその町は、独特の果物と生き物に溢れていた。

「『ドラドニエン』とこんなに気候が違うなんて……」
「ああ、かなり埃っぽい町だな……海が近いのに、断崖絶壁で海風が届かないせいだろうか……」
「うー」
『タニアが食事をご所望です、マスター』
「タニアは食い気だな。少し待ってくれ、街に入る前に……」

 町の入り口の脇、地面に穴を掘り、魔法石を埋め、結界を張る。
 よし、ミッション完了。
 次の『カジェンドのレッコ』で町に埋める分は半分だな。
 町以外に埋める魔法石の事も、そろそろ考えておこう。

「よし、行こう」
「ええ!」
「うー!」

 この町でやる事……実はもうない。
 ないので冒険者ギルドへ依頼を受注しに行く。
 目的は北西の小島『ククル』のダンジョン系の依頼だ。
 師匠に魔法石を埋める場所として、町以外に北西の小島『ククル』、北東の小島『ゼイブ』、西南の孤島『グレインズ』のダンジョンが記載してある。
 八つの町、そして三つの島のダンジョン、世界の中心、泉議会室(ドル・アトル)
 これら十二箇所に魔法石を置く。
 それが俺たちが達成しなければならないミッションだ。
 本当なら『フォブル』と『ドラドニエン』の間にある『グレインズ』にも寄りたかったが、あそこは橋が架かっていないし、ダンジョンも強力。
 タニアを連れて行くには危険すぎる。
 あそこはタニアを預けられる場所を見つけたあと、それなりに準備をしてから向かう必要があるだろう。
 そんなわけでまずは大陸と橋で繋がっている『ククル』と『ゼイブ』だ。

「そういえばセレーナ、アマードが得ようとした大型結界石はどこにあるんだ?」
「え? 『ククル』よ」

 うん、ギルドへ寄る必要がなくなったな。
 いや、せっかくだから路銀は確保しておきたい。
 やっぱり依頼を受けておこう。

「魔法石を置かなければならないからちょうどいいな」
「そうね」
「すみません、『ククル』に行く予定なのだが、なにか依頼はあるだろうか?」

 そうギルドで聞いてみると、受付嬢が口を開けていた。
 嫌な予感。

「け、『剣聖』ライズ・イース様!?」
「は、はい。一応……」

 そろそろこのやり取り飽きてきた……というか疲れてきたな。
 一連のやり取りはとりあえず済ませ、サクサク『ククル』付近の依頼を受けて教えてもらったレストランへ向かう。
 ……依頼は『ククル』の周りにある森にしか生息していない、クルラビットの肉を集める事。
 クルラビットは『ストラスト』と最北端の『レッコ』では貴重な肉になる。
 正直、北の『レッコ』は急に寒さが激しくなると聞くので、タニアを預ける場所としては不安が大きい。
 食肉用のクルラビットをこうして定期的に冒険者が狩ってこなければならないというのも、不安だ。
 あまりあの辺りに、大型の魔物が出ないせいもあるのだろうが……。

「うー!」
「そうね、タニア。綺麗ね」
「?」

 セレーナがタニアが指差す方を見て微笑む。
 なんだろうと思ったら、砂の道に宝石が埋まっている?
 いや、これは……宝石というよりは、ガラスの石、だろうか?
 なるほど、色とりどりの石が埋め込んであって綺麗だな。

「それに見て、タニア。これなんだと思う?」
「うー?」
「これは影時計よ」
「うー?」
『影時計とはなんですか?』

 セレーナが得意げに広場で見つけたものを指さす。
 一本の棒が立ち、その周りを大きなガラス石が定間隔で囲っている。

「太陽の光を利用した時計よ。この世界はゆっくーりと回転しているの。その回転と影を利用して、影で時間が示される工夫がされているのよ」
「うー」
『よく分かりませんが人間の文化ってやつですか』
「う、うーん? そうなんだけど……タニアたちにはまだ難しかったかしら? でも、お勉強はちょっとずつして欲しいし……」
「そうだなぁ」

 日差しがつらいと思ったけれど、こういう風に利用してあるのか。
 そしてセレーナはこういうものを利用して、タニアに勉強をさせようとしていると。
 素晴らしい。
 俺には考えつかなかった。
 確かにタニアはまだ人語も覚えていないからなぁ……預ける前に、少しずつでも喋れるようになってもらえたらいいんだが……。

「あ、そうだ」
「?」
「どうしたの、ライズ」
「タニア、ご飯を食べに行こうか?」
「う!? うー!」

 すごく目をキラキラさせている。
 よし、これなら……!

「よし、今日はタニアが自分で注文してみよう。タニアが食べたいものを、自分で注文……お店の人に言ってみるんだ」
「うー?」
「ああ、きっと出来るよ」
「う……」

 不安そうだが、こちらの言っている事はもう分かるようだし、きっと大丈夫だ。
 そう勇気づけながら、いざレストランで注文となったら——。

「すとらすねーく、の、かばやき!」
「「おお〜!」」

 タニアは割とガッツリ喋れるようになっていた!