最後の一夜が授けた奇跡

少しの間季里は意識がはっきりとせず、俺の手を力なく握り返しながらまばたまばたきを繰り返した。

「季里」
何度目かの俺の呼びかけで季里ははっとしたように目を開いた。

急に俺が包み込んでいた手をさっとはなす。

「どうして・・・ここ・・・」
「倒れたんだよ。非常階段で倒れたんだ。病院にいる。」
「・・・」
意識を失う前のことを思い出してきた季里は明らかに動揺を見せた。

「会食は?仕事は?会社は?理事長は?」
慌てたように俺に次ぎ次にいろいろと聞いてくる。
「どうしてここにいるの?ダメ。ダメだよ。」
どんどんと興奮してしまう季里に、俺がどれだけ季里を追い詰めてしまったかを痛感した。

「季里」
「ダメっ。全部無駄になっちゃう!律樹の・・・全部無駄になっちゃう!」
大きな声を出す季里に、病室の扉が開いて医師と看護師が入ってきた。