最後の一夜が授けた奇跡

なのに、俺は結局自分の運命に逆らいきれず、あの日も季里に、指輪を渡すことができなかった。

季里の部屋の荒れた荷物の中に、『採用通知書』を見つけて、季里がどれだけの思いで俺から離れることを決断したのか、どれだけの思いで俺に別れを告げたのかを考えると、言えなかった。

指輪を渡すこともできなかった。


季里が望まないとわかっているからだ。

季里がそんな俺の決断は望まない。


そして、一生きっと自分を責め続けてしまう。

自分のせいだと思ってしまう。

そうわかったから、言えなかった。