最後の一夜が授けた奇跡

本当はあの夜も、俺は指輪をもって季里の部屋に行った。

明らかに震えて、動揺している声で、俺の電話に出た季里。

どう繕ったって、季里の心が悲鳴を上げていることなんてすぐにわかる。


荒れた部屋の玄関に小さな体をさらに小さくして座っている季里を見た瞬間、もうなんだっていい。どうだっていいと思ったんだ。

運命がなんだ。
地位なんてなんだ。

そんなものいらない。

何もいらない。

季里以外、俺は何もいらないんだ。
ただ、季里のそばにいたいだけなのに。