最後の一夜が授けた奇跡

「律樹らしさを無くさないでほしい。」
「・・・」
「これから律樹を待っている運命は、きっとすごく大変なこともたくさんあると思う。」
「・・・」
我慢しようとしているのに、背伸びしている私の目の端から涙がぽたぽたと流れる。

でも、この恋に終わりがあることを知って律樹と付き合い始めてから、ずっと決めていた。

何度も心の中で繰り返し練習してきた言葉を言うときが来た。

「でも、律樹らしさを無くさないで。あなたは優しくて、強くて、でも甘えん坊で、少しおっちょこちょいで不器用な人。」
「・・・」
律樹の瞳がかすかに揺れる。

「そんな顔しないで。わかっていたこと。私たちには終わりがあるって、わかってたでしょ?その時が来たんだよ。」
「いやだ。季里。」
私の言葉に動きを止めていた律樹が言う。