最後の一夜が授けた奇跡

私はその瞬間首を横に振った。
私という存在が律樹の足かせになることだけはいやだ。
社長室を出て、給湯室でお茶を淹れながら私は無意識に不安で手が震えた。
「先輩、大丈夫ですか_」
後輩から声をかけられて私はぎこちなく微笑み返した。
「なんか、今日顔色かなり悪いですよ?」
「そうかな」
あまりに緊張して顔色まで悪くなっているらしい。全身の血流が止まったかのように手が冷たい。
でも、今日で最後だ。今日だけは乗り越えないとならない。
最後の試練だ。
私はもう一度気合を入れなおしてからトレーにお茶をのせて社長室へ戻った。
ノックしても返事がない。
この部屋の中でどんな話がされているのか、想像するだけでも怖い。
私は小さく深呼吸をしてから部屋に入った。

「失礼いたします。」
会話を邪魔しないように小さな声で言ってから頭を下げる。

応接用のソファに理事長が座っていて、律樹は立ったまま話をしていた。