最後の一夜が授けた奇跡

「お願い。やめて。律樹。お願い。」
焦ってうまく言葉が出てこなくても私は懇願する。
きっと言葉にしなくても私の気持ちが伝わるはずだと信じて。

その時、社長室をノックする音が聞こえた。

理事長だ。

私は慌てて社長室の扉の方へ近付いた。
「おはようございます」
扉を開けるとそこには律樹のお父さん。つまり理事長がたっていた。

私のあいさつには全く反応せず、応接用のソファの横に立っている律樹の方へ近付く。

「なんだ。要件は。」

私は全身に緊張を走らせながらも、お茶を淹れてこないとならないと、社長室の扉の前で小さく頭を下げてから退室した。
頭をあげた時、ちらりと律樹と目が合う。