最後の一夜が授けた奇跡

「理事長には会食前に話があるって言ってある。そこで俺の考えを言おうと思ってるから。」
律樹の言っていることの意味が分かってしまい私は慌てた。

「ダメ。そんなこと私は望んでない。」
「でも、俺の正直な気持ちだ。どうしてももう黙っていられない。」
律樹は令嬢との結婚について理事長に話すつもりらしい。
その瞳に揺るがない覚悟を感じる。

「ダメ。そんなこと私は望まない。言ったでしょ?私は律樹があきらめないって思ってくれただけでうれしかった。あの言葉だけで私には十分だって。だからやめて」
この覚悟を決めてしまった表情をしている律樹を止めることは私には不可能だと知っているからこそ私は必死に言う。
「お願い。やめて。」
私の言葉にも律樹の鋭い視線は変わらない。

「俺の気持ちは?」
「え?」
「ほかのことだったらなんだって運命を受け入れる。なんだって背負って生きてく。でも、これだけは譲れないんだよ。」
「律樹・・・」