最後の一夜が授けた奇跡

あとはお湯を入れるだけの状態にしておき、私は社長室に向かった。

ノックをすると律樹の声で返事が聞こえてくる。
「失礼いたします。本日の会食前に机を用意しにまいりました。」
扉に入り頭を下げてから私は律樹に要件を伝える。
「お願いします」
丁寧に私を見ながら言う律樹。
まだ目が合うとどきどきしてしまう。

私は平静を装って使用する予定の机を拭き始めた。

少し席の間隔を開けようと、ソファを動かしていると律樹が席を立ちあがり近づいてきた。
すぐに私が動かしているソファに手を添えて手伝ってくれる。
「大丈夫です。社長はお仕事を続けてください。」
「いいから」
律樹は有無を言わさない様子で、私を手伝ってくれた。
「ありがとうございました。」
配置も整えられてから私が律樹の方を見て言うと、律樹は私の方をまっすぐに見た。