「ありがとう・・・」
もうごめんねは言わない。
きっと一番この言葉を私が言って傷つくのは律樹だ。

私の言葉に律樹は私を抱きしめる手に力を込める。

「ありがとう」
私は何度も何度もそう伝えた。

「律樹なら・・・あなたなら大丈夫・・・」
「・・・季里・・・」
「運命に負けないで。・・・でも無理はしないで・・・。」
「・・・わかってる」
きっとわかっていないのに、律樹も私を心配させないように、私が律樹に悪いと思わなくていいように考えながら返事を返してくる。

「あなたなら大丈夫」

私の言葉に律樹は体を離して、私の唇に、そっと口づけた。

さようならのキス。
これが最後のキス。