最後の一夜が授けた奇跡

「ほら、足もと気をつけろよ。転ぶなよ?」
「大丈夫よ。スニーカーだし。」
「そういう問題じゃない。」

心配そうに私の手を握りながら歩く多岐川亮太。

その手を握りながら笑う私。

多岐川睦美。

私たちは半年前に入籍をした。

結婚式は会社の状況も考えて、家族だけを招いた小さな小さな内輪だけの式だった。

それでも、私には十分。

むしろ、結婚式なんてしなくてもよかった。

多岐川亮太。
つまり夫の隣に居られればそれだけで私には十分。