最後の一夜が授けた奇跡

私は多岐川の大きな背中に手を回す。

「もう十分」
「ん?」
多岐川の胸の中で精一杯の気持ちを伝える。

「今日一日、私・・・すごく楽しかった。自由な世界に連れ出してくれてありがとう。」
「まだまだだ。」
「・・・?」
「今の俺では君に本物の自由をあげられない。」
「・・・」
ふと今日告げられたことを思い出す。

多岐川は1か月後にはやめて私のそばからいなくなってしまうんだ・・・。

「言ったでしょ?もう十分だって。」
わざと多岐川を突き放すような言葉を言う。
「私にはこれで十分。これ以上は望まないし、望めない。」
「望んでいいんだよ。」
「無理よ・・・」
「無理じゃない」