最後の一夜が授けた奇跡

「ずっと昔」
「・・・?」
多岐川の方を見ても、まだ多岐川はまっすぐ前を見ている。
でも、握られている手に少し力がこもったのを感じた。

「俺よりもまだ小さい女の子が家族で参加したパーティーに居たんだ。俺より小さいのにさ、用意された靴にはヒールがあって、歩き方に少し違和感があった。でも、その子は大人たちに笑いかけるんだよ。」
「・・・」
「本当は痛いって言って靴を脱ぎ捨てたっていいくらいの小さな女の子が。座ってしまいたいってわがままを言っていい年齢の女の子が。」
多岐川の話には心当たりがある。

幼いころから私が着る服は決められていた。
履く靴も決められていた。

それ以外を選ぶことなど、私には考えもないほど、当たり前だった。

「痛いはずなのにさ、笑って見せるその子の強さに胸が締め付けられたよ。同時に、俺の履いてる歩きやすい靴を履かせてあげたいっても思った。」