最後の一夜が授けた奇跡

「疲れたら」

しばらく景色を見ていた私たち。
夕日が完全に沈んでしまう前に多岐川が私の手を握ったまま話始めた。

視線は私の方ではなく、景色の方に向けられている。

私も、ちらりと多岐川を見てから視線をもうすぐ完全に沈んでしまう夕日の方へを戻した。

「疲れたら休んでほしい」
「・・・」
「苦しかったら深呼吸して無理はしないでほしい」
「・・・」
「悲しかったら泣いたっていいんだ」


今日、私を抱きしめながら言ってくれた言葉たち。

今まで私は何があっても平静を装えとか、人前で泣くなとか、つらい時こそ笑えとか・・・自分の心を裏切ることをしなくてはならないと、いつの間にか自分の心を殺して、逆のことをするのが当たり前になってしまっていた。