最後の一夜が授けた奇跡

さっきまでのつらい思いなんて、絶望なんて忘れてしまいそうになる。

思わず頬が緩むことに私は気づきながら、多岐川に握られている手がやけに熱く感じた。


多岐川は近所にある最近はやりだというカフェでテイクアウトのキャラメルラテを買った。
初めての味ばっかり。

つめたいラテが熱いくらいの体にはちょうどいい。

雑貨店ではお互いに似合いそうな帽子を買って、二人でその場でかぶる。

少し大きかった帽子の調整をしてから私の頭にかぶせてくれる多岐川と近い距離で目が合うとまた私の胸は高鳴った。


初めての食べ物、飲み物、服、靴、お店。

こんなに自分の足で歩きながら、周りの景色や人を見ることは初めてだった。
いつもは車の中から窓の外を見るだけ。

やけにリアルに感じる世界に私はどきどきが止まらない。