最後の一夜が授けた奇跡

そんな私の反応すら楽しむようにして、多岐川は私の手をひいていく。

「着替えて。俺も着替えるから。」
と買ったばかりの服を店の中にあった試着室で着替えさせられた。

多岐川が選んだのはジーンズにグレーのパーカーという組み合わせ。

「できた?」
試着室の外から声をかけられてカーテンを開けると、そこには同じようにジーンズにグレーのパーカーを着た多岐川が立っていた。

「似合うじゃん」
そう言って笑いながら多岐川はしゃがんで靴を出してくれる。

「どうぞ」
差し出してくれた手に、戸惑いながら触れて靴に足を入れる。

私が着替えている間に靴まで用意してくれたらしい。
学生の頃以来履いていなかったスニーカー。