最後の一夜が授けた奇跡

多岐川は私を洋服店に連れて行った。
聞いたことも見たこともないようなブランドの店。

値札をちらりと見て驚いた。
いつも着ている服とは桁がいくつもたりない。

こんな値段で服が買えるの?
驚きながら店の中を見ている私の手をひいて多岐川が勝手に私の服を決めていく。

「これください」
と勝手に会計も済ませる。
「現金で」
「え?」
いつも会社の買い物はカードを預けていてそれでするようにしている。

多岐川は自分の財布から現金を出した。

「カード使ってよ」
「だめ。今日はデートだから」
多岐川の言葉に私はうろたえて返事ができなくなる。