最後の一夜が授けた奇跡

「あんまんは嫌いなの?」
私の質問に、大きな口で肉まんを頬張っていた多岐川は首を横に振った。
「どっちも嫌いじゃないですけど、肉まんの方が好きなんです」
「・・・・そう。・・・よかったら」
私はそう言って多岐川に私がかじっていないほうのあんまんをちぎり差し出す。
「ありがとうございます」
微笑みながら私からあんまんを受け取ると多岐川は躊躇することなく食べた。

もぐもぐと食べる多岐川。

私は自分の手に残っているあんまんを見つめた。

「初めて。」
「え?」
「誰かと食べ物を分け合ったのも。」
「・・・」
私の言葉に多岐川はまだ口をもごもごしながら微笑む。
「誰かとおいしいねって何かを食べるのも。」
いつも食事をするときは私は一人だった。隣に家政婦や料理人はいても、一緒に食事をすることはない。パーティーの時くらいしか誰かと一緒に食事をすることはなかった。
唯一学校では給食をクラスメイトと食べたけれど、私に話しかける人なんていなかった。