最後の一夜が授けた奇跡

更衣室から出ると、多岐川が扉の前で待っていた。
濡れていたスーツからラフな格好に着替えている。

いつもぴっしりとセットされている髪も、さっと拭いただけで無造作な状態。

そんな多岐川を見ていると、幼いころの家のパーティーで見ていたころの幼い多岐川を思い出して少し懐かしい。

あのころよりもかなり背が伸びて男らしくごつごつとした体になった多岐川。
いつもの冷たいくらい冷静な姿とは違って、なんだか・・・近くに感じた。

「まだ髪が濡れています」

多岐川は少し険しい表情で私を見ると、私の手をひいて再び更衣室に入った。

「風邪ひきますから。」
と再びベンチに私を座らせて、ドライヤーで髪を乾かし始める。

この更衣室にはいつ来てもいいように着替えもヘアセットできる物も、化粧品もすべてそろっている。でも今日は服を着るだけで精いっぱいだった。