最後の一夜が授けた奇跡

「おいっ!」
乱暴な声に目を開ける。

こんな声のかけ方をされたことがない。

「しっかりしろ」
そこにはワイシャツ姿でびしょぬれの多岐川が私のことを見下ろしている。

何度か瞬きをすると多岐川が私の体をぐっと自分の方へ近付けた。

「何やってんだよ」
低い声。でも怒っている声ではないとわかる。

その声が震えていたから。

こんな風にして誰かに抱きしめられたのは何年振りだろう・・・

幼い子供のころ以来かも・・・