最後の一夜が授けた奇跡

「お嬢様にお話があります」
多岐川の言葉に私はルームミラーを見る。

「なに?」
「実は1か月後に退職をさせていただくことになりました。」
「・・・退職?」
「相談もせずに申し訳ありません。実は以前勤めていた会社の仲間と起業することになりました。ご迷惑をおかけしますが退職をさせていただく運びとなりました。」
「・・・そう」
運転をしている多岐川はすぐに前に視線を向ける。

私は窓の外に再び視線を移した。

そのほうが多岐川にとっては幸せだ。

絶対に。

この石川財閥という囲いからでて、自由に羽ばたいてほしい。

・・・なのに・・・多岐川にとっていいことなのに・・・間違っていないことなのに・・・大きな喪失感を感じてしまう私。

なんて愚かな人間なんだろ・・・