最後の一夜が授けた奇跡

「おかえりなさいませ」

いつものように多岐川は私のことを待っていてくれた。
私の姿が見えるとすぐに車の前に出てきて頭を下げる。

「ジムまで送ってくれる?」
その言葉に多岐川は顔をあげて驚いたような顔をしてから「承知いたしました」と頭を下げた。

ついさっきまで目の前にいた二人の姿を思い出す。

結局私はマネキンにはなりきれない。

父に認められたい。
石川財閥の人を守りたい。

そのために生きて来たつもりなのに、大事な、一番大切な場面で結局私はマネキンになりきれなかった。

父から受けるであろう困難に立ち向かい、負けないでほしいとすら思ってしまった。