最後の一夜が授けた奇跡

「多岐川」
「はい」
「・・・なんでもない」
いかけた言葉を飲み込んで、ルームミラーから感じる多岐川の視線から目をそらす。

「はい」
多くは語らないのは多岐川も同じだ。

あくまで私は石川財閥の人間。
多岐川は石川財閥の社員だ。

仕事以上の会話は必要ない。

「今日はこれから【ASAKAWA】にて朝川社長と石川財閥代表との食事会です。」
「えぇ。わかっているわ・・・。」
視線をそらしたまま返事をする。

【ASAKAWA】は大手デパート。
そして朝川律樹という新社長は私の・・・婚約者だ・・・。