最後の一夜が授けた奇跡

「泉崎さんからご報告があります」
私が話すのか・・・。

当然のことだけど自分の口から言うことに私は胸がちくりと痛んだ。

「退職願を本日提出させていただきました。一身上の都合で就労規則にそい1か月後に退職させてください。」
律樹の目をまともに見られないまま私は早口に告げる。
「退職まで1カ月ありますが有休が2週間分残っていますので、3週間以内に引継ぎを済ませようと思っています。」
上司が言葉を繋いでくれて少しほっとする。

「・・・」
何も言わない律樹。
「社長?」
秘書課の上司が何も反応しない律樹の顔を覗き込む。

「・・・あっ・・・はい。わかりました。」
その上ずった声は仕事中の律樹にはかなり珍しい。