「季里」

はっきりと聞こえるその声に、私は重たい瞼を開けた。

そこには疲れた顔の律樹が私の手を握っている。

「季里」

少し潤んだ瞳で私の名前を呼ぶ律樹。

なんて情けない顔をしているのよ・・・


そう言いたいのに、握られている手を握り返したいのに・・・

思うように私の体が動かない。


力を込めてどうにか言葉を発せようとするのに、声が出ない。