最悪の状態を想像してしまう。

俺は着ていたスーツのジャケットを脱ぎ捨てた。

「天井の扉から中にはいる。何かあれば連絡してくれ。すぐに担架の用意して。」
もう一度現場を見ると何とか降りられそうな距離に止まっている。
飛び降りて最悪の状態のときに季里を何とかあげられそうだ。

「社長がいくんですか?」
社員たちが口をそろえていう。

「もちろん。妻は今妊娠6か月だ。最悪俺がしたからあげるから救助してほしい。救急車の要請は出しているから、状況は電話する。」

していたネクタイも俺は外して腕まくりしながら社員たちに伝え、まだ俺を止める社員の声を無視して45階よりも下の位置で止まっているエレベーターめがけて飛んだ。

昔何かの映画で、エレベーターをつっているワイヤーが切れて落ちるシーンを思い出す。
でも季里のことしか今は頭になくて、恐怖は感じなかった。