最後の一夜が授けた奇跡

「何を言っている?」
はじめから社員の中に内通者がいることは知っていた。
だからこそ誰にも言わないまま俺が一人で進めた話だ。
唯一話したのは、デパート専属ではない弁護士だけで、誰もつながりを知らない。

だからこそ代表もその情報まではつかんでいなかったらしい。

少し声を上ずらせる代表。

「この【ASAKAWA】も老舗になりつつあり、たくさんの方にご愛顧いただいてきました。しかし建物自体の老朽化も今後の大きな課題になっていました。新店舗設営の前に改めて現在のこのビルの状態を専門の業者に評価させたところ、数年以内に大規模な改修工事または補強工事が必要であることが分かりました。元からここの地下の地盤があまり丈夫ではないことも建物の老朽化を進めた原因であることが分かっています。」
「全くのでっち上げだ。」
代表の言葉に俺は座っていた席から立ち上がり、用意していた山積みの書類を応接用の机に広げた。