最後の一夜が授けた奇跡

「はじめから借地料の値上げをするつもりはなかったはずだ。」
「そんなわけないだろう。わざわざ出向いてまでそんなことするはずがない。」
まだ動揺しているように見える代表。

「わざわざ出向いてということ、会議室で重役たちを交えての話し合いではなく私とだけ話がしたいという要求で、あくまで予測でしかなかったことが確信に変わりました。」
俺の言葉に代表は視線をそらす。
「何を言っているかわからん、【ASAKAWA】も落ちたものだな。こんな社長がいるとは。」
強い口調で言う代表。

「こんな会社とはもう取引できん。契約期間が終了したら撤退していただこう」
代表はまだ俺と目を合わさないままに言う。

「わかりました。こちらからもご提案しようと思っていたんです。」
「なに?」
今までで一番の動揺を見せる代表。

「ここから撤退して、新しく【ASAKAWA】を作ろうと考えています。すでに土地も仮契約に入っていますし、そちらは借地としてではなく、購入することで話が進んでいます。長年借地料が我々の負担になっていましたので、次のイベントの売り上げと契約期間であるあと1年半の間の売り上げをそちらにあてようと考えていました。」