仕事を終えて会社を出ると、外は雨だった。

私はカバンの中から折り畳み傘を出す。

薄い黄色のその傘には小さな花がたくさん描かれている。
私のお気にいりのその傘は、律樹からのプレゼントだった。

突然降り出した雨に濡れて帰って、翌日熱を出してしまった私に律樹が大学生の時にプレゼントしてくれた傘だ。

もう濡れないように。
風邪をひかないようにって。

律樹と二人で急に降り出した雨にこの傘をさして帰ったこともある。

一緒に過ごした時間の分だけ、思い出が多すぎる。

私は雨に濡れないように深く傘を差しながら、誰にも気づかれないように、傘の中で涙を流した。