最後の一夜が授けた奇跡

「おかえりなさい」
そこには穏やかな表情で俺を迎えてくれる季里。

仕事に向く神経をシャットダウンしていてもまだ切り替えがつききれていなかった俺の心にぱっと光がさすように感じる瞬間。

「ただいま」
俺はその華奢な体を抱き寄せる。

頭一つ分は俺よりも体が小さい季里の肩に顔を埋めるようにして、大きく深呼吸をする。

やっと息ができるようなそんな感覚。

この体にもうひとつの命が宿っていることは今でも不思議に思ってしまう。

「今日の体調は?」
「元気」
「そっか。赤ちゃんも元気か?」
「うん。すっごく。」