最後の一夜が授けた奇跡

時計を見て、俺はまだまだ山積みの仕事から手を離す。
あまり遅くなると季里が心配する。

きっと起きて食事をつくり待っている季里。

深呼吸をして仕事に向いていた全神経を一度シャットダウンさせる。

カバンを持ち、エレベーターに乗ればすぐに自分の部屋の階に着く。

俺が一人で住んでいた時とは全く違う雰囲気になった部屋。

この部屋でこれから幸せな思い出をたくさん作っていくのだと心に決めている。
でも、今はこの部屋には悲しいつらい思いでもある。

『これが最後の夜』そう言っていた季里の言葉を今でも思い出すことがある。

絶対にそんなことは二度といわせない。
そう何度も心で繰り返し、俺は家の玄関の扉を開けた。