「借地代をあげさせていただきたい」
撤退を伝えられるかと覚悟していただけに、借地代の値上がりという内容の条件に少しだけ相手の懐が見える気がした。

今【ASAKAWA】を手放すことは明らかに損だ。

怒りに任せて手放すということはしない代表。
これからも借地代が石川財閥の貴重な財源になるということか。

あまり経営状態は良くないという噂のある石川財閥。
”財閥”の力も絶大という時代は終わった。

「先代の努力と功績に泥を塗る若輩者が社長になり【ASAKAWA】は苦労しますね。」

捨て台詞を吐いて代表は新しい契約案の書類を机に投げるように置いて去って行った。

「2週間後、お返事をうかがいに来ます。」
書類に目を通すと今の借地代に5%上乗せする契約案が書かれていた。