「今日は一番最初の結婚記念日だぞ？」
「うん」
「楽しまないと」
「うん」

しばらく抱き合ったあと、律樹は再びキッチンへ向かって料理を始めた。


結婚をして初めての日。

律樹の手料理を食べて、二人でいつものようにお風呂に入って、ソファで映画を観て、一緒にベッドに入り赤ちゃんの話をする。

そんな時間を味わいながら、幸せを感じながら、それでも心の中には今日、目の当たりにした”現実”の存在が大きくなっていた。

「おいで」
考えが進行しそうになると律樹が私を抱き寄せてくれる。

大きなあたたかな胸の中から、私は大きな窓を見る。