「いろいろなことを我慢して、犠牲にして、諦めて生きて来た私の最初で最後のチャンスをあなたが奪ったのよ。」

大きな運命を背負ってしまった律樹の苦悩を知っている。
周囲からどんな目で見られていたか、どんな人生を歩んできたか。

もっと早くに律樹と出会っていたらもっと支えられたんじゃないかと思うこともたくさんあった。

彼女も同じように生きて来たんだ・・・。

「でもね、あなたがしていることはそれだけじゃない。」

ちょうど彼女が選択したデパートの階に着く。

そこは婦人服売り場。

「見て」
「・・・え?」
私の腕をつかんでいた手を彼女は離した。