「私は石川財閥の娘として生まれた。周りからは幼いころからどうして女が生まれて男は生まれないのかってさんざん言われたわ。私だってこんなに言われるなら男に生まれたかったくらいよ。」
前を見たまま話す彼女の横顔を見る。

私よりも背の高い彼女がヒールの靴を履いていて、さらに背が高く見える。

彼女を見上げると、凛々しさの中にも切なさを感じた。

「そんな私にとっては唯一家のためにできることが、少しでもいいお婿さんをもらうことだった。なのに、あなたは私が唯一だと思って来た役目を奪った。」
彼女は私の方を見る。

その瞳は怒りよりも切なさに満ちている。

「私の人生は、石川財閥のためだけにあるようなものだった。今までどれだけのことをあきらめてきたか、あなたにはわからないでしょ。それに、どうでもいいと思ってるでしょ。そんなこと。」
まっすぐに見つめるその瞳。

彼女の苦労を私は知らない。あくまで律樹の姿から想像しかできない。