最後の一夜が授けた奇跡

「泉崎さん、社長がお呼びです。」
一緒に社長秘書をしている男性秘書に声をかけられて私は小さく深呼吸をしてから社長室に入った。

「およびですか」
「あぁ。明日のスケジュールを少し調整してほしいんだ」
「明日ですか?」
「あぁ。明日急遽、会食が入った。午前11時から午後2時までのスケジュールをずらしてほしい」
「承知しました」

あの夜以来、私たちはあくまで社長と秘書という関係を貫いている。
時々、律樹から視線を感じても、私はなるべくそらしたり、なんでもない毅然とした視線を返すようにしている。

私は律樹に小さく頭を下げてから、再び扉の方へ歩き出した。

「季里」
久しぶりに名前を呼ばれて私は全身に電気が走ったかのように反応してしまった。