最後の一夜が授けた奇跡

「こんな紙きれで人生決まるからな。」
律樹は緊張する私の気持ちに輪をかけるように言った。

「やめて。余計に震えるでしょ」

私が向き合っているのは婚姻届だ。

こんなにも緊張する書類ははじめてだ。

さっそく自分の住所を間違ってしまいそうになる。

横で律樹が間違えないように私の生年月日や本籍地を言ってくれている。

代わりに書いてほしいくらい、律樹は私のプロフィールを把握している。

震える手で何とかかき上げた婚姻届。
そこにはすでに律樹のお父さんの名前と私のお母さんの名前が書かれている。

まさか律樹のお父さんが保証人になってくれるとは思っていなかった。
でも、律樹が理事長の家へ婚姻届を持っていくとすぐに記入をしてくれたらしい。