最後の一夜が授けた奇跡

私が社長室から出てすぐに不機嫌にヒールのかかとを鳴らして女性が出て来た。

私の方を見て、キッっと睨むと、ぷいっと視線を外して部屋を出ていく。



その女性は、律樹の許嫁の女性。
このデパートの建っている場所だけではなくかなり広大な土地を都心にもっている大地主の娘だ。

私は、扉が閉まったままの社長室の方を見る。


これが律樹が背負っている運命だ。

今私がこの扉の向こうに行ったらダメだ。

背を向けていないとダメなんだ。

私はずきずきと痛む胸の前でギュッと手を握り社長室の扉に背を向けた。