最後の一夜が授けた奇跡

「石川財閥からこの土地を買おうと考えた時もあったがそれは無理だった。」
「・・・」
「売って一時の利益を得るよりも、これから先何年も高額な土地代を得ることで石川財閥の経営資金にするのが昔からの石川財閥の考えだ。」
私を見たまま話をする理事長。

その言葉は私に向けられていることが分かる。

「長年、この土地の借地代が我々を苦しめて来た。支払わずに済む方法があるのなら、購入し権利を得ることができればかなり経営にも関わってくる。そんな夢のようなことができるチャンスが、律樹と石川財閥の娘さんの結婚だったんだ。石川財閥には後継者になれる存在がいないから苦肉の策だったらしいが。言ってる意味が分かるかね」
「・・・はい」
理事長に返事を返す私。

「いや、どれだけのことが分かっていない。」
私の返事を否定する言葉に律樹がすかさず話に入ってくる。

「彼女は十分すぎるほどわかっています。」
「いや、律樹、お前もわかっていない。」
理事長は視線を律樹にうつした。